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消費と生産

物質の豊かな社会で、世間の動きに翻弄されずに自分の人生を生きるために大切なことは、誰かが作ったもので遊ぶのではなく、自分自身で遊びを生み出し、それを専ら楽しむことだと思う。
遊び上手な人は、誰かが作った遊びであっても、それを作った人の想定を越えた遊び方を生み出す、創造性の豊かな人だったりする。

生産活動において特に楽しいのは、絵や歌・踊り・文芸など、不要不急で無為とされる芸術に時間を費やすことだ。
それらの抽象的な手段で自分自身を表現できるように試行錯誤しているときこそ、最も生きている実感が得られる。

芸術に身を捧げる行為は、原始時代から人類が連綿と続けてきた知的活動である。
彼らの残した壁画や彫像といった痕跡の持つエネルギーの強さといったら尋常ではない。

文明は変われども、「芸術をする」という根源的欲求は原始時代でも現代でも変わらずに人間が持ち合わせているものだ。
私が芸術をしているとき、遠く時空を超えて彼らと心を通じ合わせているような感覚になる瞬間がある。

芸術は同時代の人たちへの自己表現であると同時に、古代から人類が渡し続けているバトンを受け継ぐ作業だと私は思っている。
そういう芸術のロマンチックさが私は好きなのだ。

時に「不要不急」と言われ芸術が弾圧されるときがあるけれども、芸術が完全に抑え込まれた瞬間なんて歴史上どこにもない。
人の中に渦巻く芸術をすることへの欲求は止められない。芸術は、人の心の最後の砦である。